六ツ美のあの肉

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第3回「昔の親鳥の食文化」

COLUMN
 昔の農家では、鶏を飼っていた方が多かった。
 鶏は「卵を産む貴重動物」だけではなく、卵を産み、糞は畑の肥料になり、そして最後は肉として食す。大げさかもしれないが、まさに自給自足。一羽が、家族の暮らしを支えていた。
 今回は、そんな昔の「親鶏」の話をしよう。
 今ではスーパーへ行けば、モモ肉、ムネ肉、ささみと、食べやすく切り分けられた鶏肉が並んでいる。でも、私が若かった頃は違っていた。
 昭和35年頃、まだブロイラーが出回る前は、鶏肉といえば殆どが親鶏だった。
 当時はこの地域に鶏肉屋さんが何軒かあり、中には自分の店で鶏を絞めて、処理して、肉にして売る店もあった。毛引きからすべてやるのだから、今思えば随分大変な仕事だ。
 愛知県三河地方では養鶏が盛んで、農家の庭先には鶏がいるのが当たり前。
 農家では卵を取り、鶏糞は畑の肥料にする。そして鶏には、「しいな」と呼ばれる十分に実らなかった米や、デントコーンなどを餌として与えていた。
 卵を産ませ、最後は肉として食べる。そうやって大切にしていた。
 そうして育てた鶏の肉は、何より貴重であった。一羽の鶏があれば、家族で3~4日かけて大切に食べる。鶏肉をもらえば、そりゃ嬉しい。贈答品というほど高級ではないが、おすそ分けすると大変喜ばれたものだ。
 ところで、親鶏には大きな特徴がある。「とにかく、硬い!」
 料理の仕方を間違えると、「これは肉なのか、ゴムなのか?」と思うくらい硬い。
 でも、当時はそんなことを言っていられない。肉が貴重だから、硬くても喜んで食べていたものだ。
 しかも、よく噛んでいると、どんどん旨味が出てくる。これが親鶏の面白いところだ。脂肪が少なく、歯ごたえがある。少し脂のある親鶏は、これがまた旨い。

 

 

 それでは料理についてお話しよう。私が一番おすすめしたいのは「鶏めし」だ。
 親鶏を炊き込むと肉も柔らかくなり、ご飯に鶏の旨味がしっかりと染み込む。ブロイラーとは違う、親鶏ならではの味が楽しめる。
 続いては、「唐揚げ」。ムネ肉、ササミは筋がなく食べやすい。とにかく食べているとじわじわと旨味が出てくるから最高だ。モモ肉は一口大くらいに切って唐揚げにすれば、これがまた皿に盛られた分全部食べてしまう旨さで、何度食卓に上っても嬉しい。
 他にも、鶏すき、味噌汁の具、肉じゃが煮物など、昔は一羽をいろいろな料理に使っていた。
 皆さんは知らないかもしれないが、皮がおいしく、好きな方も多い。ただあまりにも硬くて噛み切れないので、薄くスライスするのがおすすめだ。
 それから内臓も料理に大活躍。肝、キンカン、卵道なども美味しく食べられる。一羽を余すところなく使う。それも昔の食文化の良さであろう。
 繰り返しになるが、親鶏には多少手をかけてでも食べたい美味しさがある。
「硬いからこそ、噛む。噛むからこそ、味が出る。」
 急いで食べる肉ではない。ゆっくり噛んで、昔の人が大切に食べてきた「鶏の味」を、機会があれば是非一度味わってみてほしい。調べれば扱っているお店が出てくるであろう。
「なるほど。これが親鶏の味か!」
 そう思ってもらえたら、82歳の私としては、こんな嬉しいことはない。